次の日
まだ体が痛いな。
目が覚めた海斗は、ベッドの上で身体を少し動かしそう思った。しかし、動けないほどではなかった。
横を見ると、ヒナがまだすやすやと寝ていた。
「お腹すいたな。」
そう言えばよくよく考えてみると、昨日から何も食べていない。
ヒナは海斗の方向いて寝ていたので、何となく頭を撫でて起きるのを待ってみることにした。
なでなで。なでなで。
ヒナは一向に起きない。
「ヒナ起きねぇな。」
なでなで。なでなで。
何でヒナ起きねぇんだろ?
ほっぺたをつねってみた。
「ちょっと何すんのよ」
「起きてるじゃねーか!」
「起きてませんでした~。さっきまで寝てました~」
「何でとっとと起きねぇんだよ!」
「寝てたから起きれませんでした~」
「お前な」
「そんで何? 何か用があったから起こそうとしたんでしょ?」
「腹減ったからどっか飯食いに行こうぜ。」
「良いけど、あんた金あんの?」
「まあまあある」
「あそ。そう言えばそうだったわね、じゃあ行ってもいいけど・・・・・・立てる?」
俺はゆっくりベッドから降りた。
「大丈夫そうだな。まあ、まだ若干体が痛いけど」
「そう、それじゃファミレス行きましょ。話したいこともあるしね」
「話したいこと?」
「いいから、早くいきましょ」
海斗たちは家を出てファミレスに向かった。朝のファミレスには人が居なく店内はガラガラだった。
「何食うんだ?」
「あたしは・・・・・・マツマツ牛のステーキにしようかな。」
「お前朝からガッツリ食うな。」
「良いでしょ別に。」
「太るぞ?」
「あたしは太らないわよ。ってか太りたくても太れない体質なのよね」
「変な体質だな。まあ、太りたいなんて思うことないと思うけどな」
「変な体質とは失礼ね。ドラゴンはみんなこんなもんよ」
「まあ確かに太ったドラゴンとか聞いたことないな」
「ドラゴンの姿でドカ食いすれば太れるらしいけどね。ドラゴンの姿だと食べても食べても足りないのよね」
「なるほどな。食費がヤバそうだな」
「そうよ。だから大体どのドラゴンも食べるときは人型になってるのよ」
「なるほどな。ドラゴンの姿だと一食どのくらい食うんだ?」
「マツマツ牛三頭食べても足りなかったわ」
「そんなに食うのか⁉ マツマツ牛って重さが5トンはあるぞ⁉」
「ドラゴンだとそれでも足りないくらいだから、太るには十頭は必要ね。太ってもいいこと無いから誰もやらないけどね」
「なるほどな。ドラゴンの方が消費カロリーが高いって事か?」
「消費カロリーとはまた別だと思うわよ。消費カロリーが高いとすぐにお腹がすいてしまうでしょ?」
「ああ、確かに」
「だから人型とドラゴンだと体質が違うと思うのよ。人型だとドラゴン程は食べられないし、どれだけ食べても全く太らない。ドラゴンだとそれ相応の量を食べれば太るってね」
「へぇー。ドラゴンでそんだけ食うのに、人型でそれだけで足りるのか?」
「余裕で足りるわよ。普通の人の一食と同じくらいで大丈夫なの。」
「何でだろうな。バカみたいに食ってもおかしくないと思うんだが・・・・・・。」
「食べようと思えば食べれるけど、それでも、ドラゴンの時ほどは食べれないわ。それに、バカみたいには食べません。海斗そろそろ食べるもの決まった?」
「えーっと・・・・・・ケイ鶏のから揚げと、ご飯のセットにしようかな」
「あ、あたしもご飯付ける」
「了解!」
ボタンを押して店員を呼ぶと、すぐに注文を伺いに店員がやってきた。
「ご注文はをお伺いいたします。」
「ケイ鶏のから揚げと、ご飯セット。あと、こいつには激辛ラーメンを・・・。」
「おいてめぇ!」
俺は殴られ机の上に頭を突っ伏して倒れた。
「すいません。激辛ラーメンキャンセルで。マツマツ牛のステーキと、ご飯セットでお願いします」
「かしこまりました。ご一緒にドリンクバーはいかがですか?」
「結構です」
店員は倒れている俺を見てクスっと笑った。
「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ~」
店員が厨房の方に行くと、ヒナはすぐさま倒れている海斗の胸ぐらをつかんだ。
「てめぇ何であたしに激辛ラーメン食わそうとしたんじゃこのやろう?゛あ?」
ヒナはブチ切れていて、まるで俺きからカツアゲでもしているかのようだった。
「すみませんでした」
海斗が謝ると、ヒナは手を放した。
「あんたいつもこうなの?」
「いつもこうとは?」
「琴乃ちゃんといるときとか」
「ああ、いつもこんな感じだな」
「琴乃ちゃんにも今のやったの?」
「今のとは?」
「激辛ラーメンのやつ」
「ああ。やったらぶん殴られたぞ。今みたいにな」
「そりゃそうでしょ」
「爺にもやったら、あいつは普通に気付かなかったな」
「そうなんだ」
ヒナはクスッと笑った。
「わし、ラーメン頼んどったっけな? とか言ってたから、頼んでたぞ。って言ったら泣きながら激辛ラーメンを食べてたのが面白かったな」
「あんた何してんのよ。」
ヒナはそう突っ込みつつも笑っていた。
注文していた料理が届くと、ヒナが話を切り出した。
「海斗くんに真剣な話があります」
「何だ?」
「そろそろ旅に出ないといけないのです」
「もう出なきゃいけないのか⁉」
「ええ、多分明日にはあんたの身体も治っていると思うし、一週間以内に必ず出発します」
「一週間かよ! 唐突過ぎないか? 俺はまだ実戦経験もないし弱いと思うぞ?」
「その辺は大丈夫です。これを見て下さい。」
ヒナは一枚のチラシを取り出したので、俺はそれを読んだ。
勇者養成学校
「何だこれ?」
「これは王都にある勇者養成学校です。その名の通り勇者を育成する学校です」
「勇者って俺だろ? その学校俺しか行かないんじゃないのか?」
「この学校はね、三年間学校で訓練して限りなく勇者に近い人材を育成する学校なのよ。卒業したらみんな冒険者になってるわ。冒険者育成学校みたいなものね。あんたも卒業したら相当強くなってると思うわ」
「なるほどな。で、ここに行けと」
「そうです。その入学試験が一週間後です」
「まあ、学校にも行ったことないし、行くのは良いんだけど学費っていくらくらいなんだ?」
「一人当たり金貨三十枚よ。まあ、あんたそんなにお金持ってないと思うら、あたしが立て替えてあげてもいいけど、」
「持ってるぞ?」
俺が話を遮ってそう言った。
「・・・・・・え?」
ヒナが言葉を失った。
「・・・・・・え?」
俺はそのヒナを見てヒナにそう言い返した。
「いやいやいや」ヒナがそう言った。
「いやいやいやいや」俺もそう言い返した。
「え? 金貨三十枚よ?」
「金貨三十枚だな」
「大金よ?」
「間違いなく大金だな」
「お前何で持ってんだよ、どっから盗んできたんだよ!」
ヒナは再びブチ切れた表情になり、俺の胸ぐらをつかんだ。
(((盗んでねぇよ)))
「ポーション売って稼いでたんだよ」
「そんなに稼げるポーション作れるの⁉ あんたが作れるのなんてせいぜい雑魚ポーションくらいだと思ってたけど」
「失礼だな、中級ポーションを作って売っていたんだが?」
「中級ポーション⁉」ヒナはそう言うと、呆れた顔をした。
「あんたバカね~。凄くバカね」
「え、何で?」
「いや、ほんとバカだわ」
「・・・・・・お、おう」
「紛れもないバカね。ここまでバカだと思わなかったわ」
(((バカバカうるせぇ)))
「何が言いたいんだよ」
「だって、中級ポーション飲めば身体強化の後遺症すぐ直るでしょうよ」
「あ。確かに・・・・・・。」
「バカでしたね?」
「バカでした」
俺はいつも持ち歩いているポーションをカバンから取り出し、すぐさま飲んだ。
「どう?治った?」
「治ったな」
「じゃあ、話を戻すんだけど、その学校にはあたしも行きます」
「はい」
「そして今年、その学校には女勇者が入学します」
「はい。・・・・・・はい?」
「それで、その女勇者に会って欲しいんだけど・・・・・・。」
「待て待て待て。女勇者って何だ?」
俺は再び話を遮った。
「女の、勇者。」
「いや、そういう事じゃなくてだな。勇者って俺一人じゃなかったのか?」
「残念ながらあんた一人じゃありませんでした」
「そうですか。そしたら俺からヒナさんに、大変残念なお知らせがあります」
「何でしょうか」
「魔王を倒す冒険は女勇者がやってくれるので、俺はここで辞退します。今までありがとうございました」
海斗がお辞儀をすると同時に、再びヒナが海斗の胸ぐらを掴みかかった。
「てめぇが魔王倒すって言ったんだろうが、もう一回裁判やってやろうか゛あ?」
「すみませんでした」
コメント