告白するって決めたから。 『短編』

恋愛系

主人公 

川原(かわはら) 蓮人(れんと) 高校1年

ヒロイン

西園寺(さいおんじ) 美風(みかぜ) 高校2年

 僕の名前は『川原 蓮人』だ。突然だが僕は生徒会に入っている。そして、僕は生徒会長の『西園寺 美風』先輩に恋をしている。

 先輩は容姿端麗、学業優秀、スポーツ万能。おまけに生徒会長までやっていて、誰もが憧れる存在だ。それに比べて僕は、何の変哲もない普通の高校生。勉強も運動も得意ではなく、中学時代の成績は至って普通。そんな僕が生徒会に入った理由は、調査書に書けるから。ってだけで、自分の力で学校を良くしていきたいと思ったからではない。今まで彼女なんていたことがなく、クラスの奴らはきっと僕のことを『さえないモブキャラ』くらいにしか思っていないだろう。

 そんな僕が、学校一のアイドル的存在な生徒会長の先輩に本気で恋をしてしまったのだ。

 中学時代は、可愛いなぁ~とか、優しいなぁ~。って思う子は確かにいたけど、好きかと聞かれたら別に好きではなかったのだと思う。いや、好きではなかった。先輩に会って初めてそう確信できた。僕は絶対に先輩に告白する! そう心に決めた瞬間の出来事があった。ここからはなぜ僕が先輩のことを好きになったのか、について話していきたいと思う。それは、僕が高校に入学してからまだ1ヶ月程の事だった。

 僕の高校では、5月の中旬に中間テストがある。入学してからたったの1カ月半で中間テストがあるのだ。僕はテスト勉強をするために生徒会室に入った。

 普通は学校付属の図書館でテスト勉強をするものだが、テスト前になると大勢の生徒が集まってくるので、僕は生徒会室でテスト勉強をすることにした。

 ガラガラ (生徒会室の扉を開ける音)

 そこには既に西園寺先輩がいて、テスト勉強をしていた。

「あっ、先輩お疲れ様です!」

「あら蓮人くん。お疲れ様! 今日、生徒会の業務なんてあったっけ?」

「いえ、業務があったから来た訳ではないです。先輩はここでテスト勉強してるんですか?」

「そうよ。ここは人が居なくて勉強するならここの方が落ち着くからね」

「実は僕もここで勉強しに来たんですけど、ここで勉強しててもいいですか?」

「いいわよ、じゃあ、一緒に勉強しようか」

 僕たちは一言二言会話をすると、テスト勉強を書始めた。

「・・・・・・。」 

カリカリ カリカリ (ノートに字を書く音)

「・・・・・・。」 

カリカリ カリカリ (ノートに字を書く音)

 僕たちは無言で勉強していた。2時間くらいたっただろうか。僕より前から勉強をしていた先輩の集中力が切れたようだった。

「はぁ~、疲れたぁ~」先輩は方腕をグッと上げて伸びをした。

「蓮人くん、よく集中力切れないね」

「このくらいの時間ならまだまだ大丈夫です!」

「あら、意外と集中力あるのね」

「集中力はある方だとは思いますが、僕くらいの人はいっぱいいますよ。それに、先輩の方が先に勉強を始めていたので、先輩の方が先に集中力が切れるのは当たり前ですよ」

「あらそう? あたし、集中力に関してはかなり自信あったから、蓮人君の方が先に集中力が切れると思ってたけど」

「僕のこと見くびりすぎですよ!」

「なんか、蓮人くんって勉強できなさそうなイメージだったからさ」

「それは、そうかもしれませんけど・・・・・・。」

「あら、図星なんだ~」先輩はニコニコしながらそう言った。

「でも、こうして勉強してるんだし、絶対良い点数は取ってやるって思ってますよ」

「あらそう、どこの大学目指してるの?」

「いや、僕は高卒で働くつもりですよ」

「えーっ⁉ うそ! 絶対大学に行った方が良いよ! 就職先が全然違うよ?」

「それはそうですけど、別に大学に行かなくても勉強はできますし、大学に行かずに色々な資格を取って就職するつもりです!」

「じゃあ、何で資格に関係ない学校の勉強してるのよ」

「学校の成績が良い方が就職先もいいところが見つかるんですよ」

「へぇ~。そういうもんなのね」

「そういうもんです」 

「じゃあさ、見てあげよっか? それ」

「ん? 見てあげるって何をですか?」

「勉強教えてあげるって言ってるのよ。ちょっとそれ持ってこっち来て。集中力切れちゃって、何か別のことしたくなっちゃったのよ」

「本当ですか⁉」

「ええ、良いわよ!」

 僕は正直言って、勉強が得意なわけではない。苦手と言う訳でもないが、勉強が得意な先輩に教えてもらえば、きっと点数も良くなるはずだ。そう思い、素直に嬉しかった。

 僕は全参考書をカバンごと持って、先輩の左隣に座った。

「それじゃあ~、何の教科教えてほしい?」

 僕はどうせならまだ手を付けていない教科が良いと思い、「数学で!」と言って参考書を開いて先輩に見せた。

 先輩は長い髪を、僕の座っている左側だけ耳にかけ、勉強を教え始めた。

 先輩との距離が近い。先輩の甘い香水の匂いが僕の鼻を通り抜けていく。この時、僕は先輩と話していて初めて緊張した。

 容姿端麗、学業優秀、スポーツ万能の誰もが憧れる学校のアイドル的存在である生徒会長が、冴えないモブキャラみたいな僕だけのために時間を使ってくれている。そりゃ緊張だってするさ。おまけに香水のせいでめっちゃ良い匂いもするし。

 僕は全く集中ができないまま、何か聞かれたら空返事をして誤魔化し、集中しているそぶりを見せながら、暫くすると下校時間のチャイムが鳴った。

キーンコーンカーンコーン

「今日はここまで」先輩がそう言ったので、緊張していた僕はほっとして、胸を撫で下ろした。

「ありがとうございました!」僕はそう言って、先輩を見ると、先輩はニコッとして、「どういたしまして、こっちこそありがとね、息抜きになったよ」と言った。

 そう言われた時、僕は嬉しくなった。そして、その先輩の笑顔が可愛くてつい見とれてしまった。その直後、僕の胸の鼓動は再び動き出した。

ドクン ドクン ドクン 僕の鼓動は自分でもはっきり分かるくらいに大きかった。

 ヤバい、また緊張してきた? いやこれはそういう緊張感じゃない! 先輩の事好きになった・・・・・・かも。いや、まだ分からない。落ち着け、僕!

「ん? どうかした?」先輩のことをジッと見たまま、ピクリとも動かなくなって固まっていた僕に先輩がそう声をかけた。

「あ、いや、何でもないです」僕は咄嗟に先輩から目を逸らした。

「ん? まぁ、いいけど。それじゃ、帰ろうか!」

「あ・・・・・・は、はい!」

 僕は緊張してガチガチに震えながら先輩と校門まで来た。その間も先輩はいつものように話しかけてきてくれている。僕はいつも通り喋れているだろうか。今でも横にいる先輩と目を合わせられない。

「それじゃ、あたしこっちだから!」

「あ、お疲れ様です!」

 僕は先輩が帰るのを見送ると、胸の鼓動はスッと収まった。

 この出来事が、僕が先輩に告白したいと思ったきっかけだ。きっと先輩は何となく僕に勉強を教えてくれただけだろう。それでも、そりゃあんだけ何でもできる凄い人が、良い匂いの香水付けていて、僕の真横で髪をかき上げるしぐさそして、とどめに至近距離でのあの笑顔。彼女いない歴イコール年齢の僕が意識しないはずないじゃんか。先輩、わざとやってんのかな? って思ったよ! それでも、好きになっちまったんだもん。僕みたいなモブキャラにも優しく接してくれる。そんな先輩が僕は大好きなんだ! いつか、いつかきっと彼女に告白して僕の気持ちを伝えて見せる!

 ここからは僕が先輩に告白するまでの話をしようと思う。先輩が僕のことをどう思っているのか全く分からなかった僕でも、やれることは全てやったつもりだ。

 僕が人生初の告白に踏み込むまでの話、ぜひ聞いて行ってくれ!

 僕は帰宅すると、自分の部屋で考え込んでいた。

 どうしよう・・・・・・。次合う時にどんな顔すればいいんだろう。冴えないモブキャラみたいな僕が、あなたの事好きになりました。なんて言ったら嫌われるだろうなぁ。

 そうか! それなら少しでも先輩に好きになってもらえばいいんだ! でも、どうやって? 先輩に好きになってもらうにはどうしたらいいんだ? ってか自分で言うけど、先輩にとっても僕ってモブキャラみたいなもんでしょ。そんな僕のことをあれだけ何でもできて美人な先輩が好きになるなんてありえない!

 やっぱり、それなら僕から告白するしかないってことか。・・・・・・でも、告白なんて一度もしたことないし。いや、今すぐに告白するわけじゃないんだ。もっと沢山話をして、もっともっと仲良くなったら告白しよう! 絶対、絶対告白しよう‼

 僕はそう心に誓った。

 それじゃあ、とりあえず告白の第一歩として明日も生徒会室に行って一緒に勉強だ!

次の日

 キーンコーンカーンコーン 授業の終わりのチャイムが鳴った。

 僕は急いで教科書をカバンに詰め込み、参考書を持って、生徒会室に向かった。僕は絶対に仲良くなってやると意気込んでいて、案の定先輩より先に生徒会室に着いた。僕は一先ず、勉強しながら先輩を待っていた。

 ガラガラ 扉が開く音

「あら、蓮人くん。おつかれ! 今日もここで勉強するんだ」先輩がそう言って入ってきた。

「先輩、お疲れ様です! 今日もここで勉強します!」

 それからは、テスト期間中は毎日生徒会室に通った。先輩と一緒にいても徐々に集中できるようになってきて、会話も普通にできるようになってきた。何より一緒にいると嬉しくて楽しくて仕方がなかった。たまに笑う先輩の笑顔が好きで、ずっとテスト勉強をしていたいと思う程だったが、そうはいかなかった。

「先輩、明日テスト当日ですね」僕たちはいつものように生徒会室で勉強していた。

「そうだね。でも、これだけ勉強したからいい点とれるでしょ」

「はい、そうだと思います」僕はテスト期間が終わったら、先輩と一緒に居れる時間も無くなってしまうと思い、気分が落ち込んでいた。

「どうしたの? 蓮人くん今日元気ない?」僕はそう言われ、図星だったので咄嗟に元気なふりをした。

「そんなことないですよ! めちゃくちゃ元気です!」

 先輩、鋭いなぁ。僕モブキャラみたいなだけあって、そういうの悟られたこと一回もなかったんだけどな。

「あらそう。それならいいけど、明日テストの初日だよ? 風邪引いてるならさっさと帰って寝た方が良いよ?」

「いや、風邪じゃないですよ。なんか、テスト前日だから緊張しちゃって」僕は咄嗟に嘘をついた。

「そうだったんだ。たくっさん勉強したんだから大丈夫よ! 自信もって! 臨みな」

「はい、ありがとうございます!」僕はそう言うと、先輩の優しさに嬉しくなった。その日も暫く勉強して、他愛のない話をしていると、下校のチャイムが鳴った。

下校時間には逆らえない。僕はしぶしぶ帰宅した。

 *

 それから1週間後、テストの返却があった。その日の放課後、特に用事はなかったが、テスト期間中は放課後に生徒会室で過ごすことが多かったので、何となく生徒会室に行った。

 先輩いないかなぁ~。

 僕が生徒会室の扉を開けると、先輩が椅子に座っていて、テストの結果の見直しをしていた。

「お、蓮人くん。おつかれ! テストどうだった?」

 い、いた⁉ そうか、テストの後は間違えたところの復習をするために、先輩はここに来ていたのか!

「お疲れ様です! おかげ様で結構よかったですよ!」

「それじゃ、テストの答案みして」先輩がそう言ったので、僕は全てのテストの答案用紙を先輩の所に出した。

「へへっ、結構よくないですか?」僕は得意げにそう言った。

「あんたねぇ。全部70点台じゃない! そんなんでよく 結構よくないですか? なんて言えたわね」

「え、そ、そうですかね。悪いですかね?」

「わ・る・い!」

「え~、そ、そういう先輩はどうだったんですか?」僕がそう言うと、先輩は僕の机に自分のテストの答案用紙をドサッと置いた。

「ぜ、全部百点満点・・・・・・。」

「あんた、あたしが教えてあげたんだから全部90点は越えててほしかったんですけど」

「す、すみません」

「はぁ、次の期末もここで勉強するから。いいね?」

 お? マジ? それ罰を与えているつもりなんだろうけど、僕にとってはご褒美だぞ?

「はい!」僕は元気に返事をした。

「全くこんなに間違えて、とりあえず今は見直しするよ」

「・・・・・・はい、すみません」

 僕は先輩に教えてもらいながらテストの見直しをしていた。その時、先輩のペットボトルのお茶が空になっているのが目に入った。

「先輩、教室に忘れ物したんでちょっと待っててもらってもいいですか?」

「まぁ、いいけど?」

 僕はダッシュで自動販売機に向かった。幸いにも自動販売機は階段を降りてすぐだったので、すぐに帰ってくることができた。

「はぁ、はぁ、はぁ、」僕は息切れしながら生徒会室に戻ってきた。

「そんなに急がなくてもよかったのに」先輩は息切れしている僕を見てそう言った。

「先輩、これ」僕はそう言い、買ってきたお茶を渡した。

「えっ⁉ あんた忘れ物取りに行ってたんじゃないの?」

「いや、違くて、これは勉強見てもらってるので先輩へのお礼です。丁度お茶無くなってたから」僕は息切れを治しながらそう言った。

「あらそう、それじゃ、ありがたく頂くわね!」先輩はお茶を飲むと、再び僕に勉強を教えてくれた。そして、暫くすると、先輩のスマホから ピロリン と、音が鳴った。きっと誰かから連絡が来たのだろう。

「よし、じゃあ~ちょっと休憩しよっか?」

「分かりました」僕がそう言うと、先輩は電話をするためか、生徒会室を出て行った。

 ヤバい、彼氏かな。彼氏だったらどうしよう・・・・・・。彼氏が居たら僕、もう失恋なんですけど。

 数分後先輩が戻ってきた。

「それじゃ、始めようか!」

「先輩、今電話してましたよね?」

「うん、してきたよ」

「あの、その、」

「なに? どうかした?」僕は勇気を振り絞ってこう聞いた。

「今の電話って彼氏さんですか?」

 先輩はクスッと笑うと、こう言った。

「違うよ、お母さんだよ」

 僕がほっとしていると、先輩はこう言った。

「あたし彼氏いないよ? 誰かから彼氏いるって聞いたの?」

「いや、そういう訳じゃないですけど、先輩モテそうだし、彼氏さんからの電話だったら、僕の為に時間を使ってもらってたら申し訳ないかなって思って」

 本当は彼氏が居たら僕の恋が積んでるところだったけど、居なくてよかったぁ!

「あそう、あたし意外とモテないけどね」そう言うと、先輩は席に座った。

 僕は嘘だなぁ~と思ったが、それより今先輩がスマホを出したのを見て、先輩と連絡先を交換していないことに気が付いた。

「先輩、連絡先交換してくれないですか?」

「いいわよ! はい」先輩が連絡先を教えてくれた。

 よっしゃぁぁぁ‼ 先輩と連絡先交換できたぜ‼ やっほ~い‼

「それじゃ、続きやろうか!」先輩がそう言った時、下校時間のチャイムが鳴った。

「今日はここまでですね」

「そうね、今日金曜日だし、また今度だね!」

「はい! またお願いします!」

 僕は家に帰ると、早速先輩に連絡した。

『今日はありがとうございました。』すると、すぐに先輩から返信が来た。

『こっちこそ、ありがとう! 復習できて何か得した気分!(^^)!』

『それは良かったです。』

 それから何分経っただろうか。会話が途切れることなくやり取りができている。因みに先輩が人生で初の家族以外の女性の連絡先だ。

 その後も数日の間、度々先輩と連絡を取り合っていた。そして、僕が行動を起こそうと決心したのは金曜日だった。

 先輩と休日にも合いたい! 僕はそう思って、先輩をカフェに誘ってみる事にした。すると、

『来週の土曜の午後なら空いてるよ!』と、返信が来た。

よっしゃぁぁぁ‼ デート? デートじゃないこれ? ヤバい、嬉しすぎる! 僕は喜ぶと同時にこんなことを考えた。

 来週の土曜日、先輩と楽しく過ごせたら、告白する!

デート当日

 僕は30分前に駅前に着き、先輩を待った。すると、約束の時間の5分前に先輩が来た。

「お待たせ! 早いね」先輩は中に白いTシャツを着て、上からクリーム色の半袖の夏用カーディガンを羽織っていて、下は黒いショートパンツをはいていた。

 足長っ! モデルみたい。僕がぼんやりしていると、先輩がこう言った。

「あんた、意外とファッションセンスいいのね」

 僕は当日までにファッション雑誌を読み漁っていたので、おしゃれな服装を着ていくことに成功した。

「そうですかね! 嬉しいです!」

「それじゃ、行こっか!」

 僕は先輩とカフェでまったり過ごし、夕方ごろ店を出た。

「楽しかったね!」先輩はニコニコしながらそう言った。

「はい!」

「良かったらまた誘ってね!」

「勿論です!」

 今だ、告白するなら今しかない、今告白しよう!

「先輩!」僕は前を歩く先輩に立ち止まって声をかけた。

 ドクン ドクン ドクン 心臓の鼓動が高鳴って辺りの音が聞こえなくなった。

「なに? どうしたの?」

「あの、僕」

 ドクン ドクン ドクン 胸の鼓動が激しさを増す中、先輩は黙って僕のことを見ている。

「笑顔が可愛い先輩が、大好きです! 僕と、付き合って下さい!」

 先輩はニコッと笑ってこう言った。

「じゃ~ 一緒の大学に行ってくれるんなら、付き合ったげる」

「一緒の大学?」

「あんた、高卒で就職するとか言ってたでしょ?」

 ああ、そういう事か、僕・・・・・・振られたのか。まぁ、僕振る口実としてはもっともだよな。高卒で、自分で資格を取って就職を目指すなんて普通に考えたら無謀だし。僕には高根の花だったってことか。はぁ~・・・・・・ああ、そうだ会話。会話続けないと嫌われちゃう。それだけは避けないと。

「ああ、うん。言ったけど・・・・・・。」僕は露骨に落ち込みながらそう言った。

「あたし、それ絶対許さないから」

「そうかぁ~」僕は上を向いた。

「そうかぁ~って何?」

「いや、告白できただけでも僕は満足ですよ。先輩、ありがとうございます! 僕のこと嫌いにならないで下さい」

「はぁ~?」僕は初めて先輩の起こっている顔を見た。

「えっ⁉ ちょっと待って下さい、僕振られたってことですよね?」

「何で振られたってことになるの? あんた、昔からほんっとうにバカだよね」

「えっ⁉」

「一緒の大学に入るって言ってくれたら付き合うって意味に決まってるでしょ! それともあたしと付き合うより就職する方が優先なわけぇ?」

「いや違うんだ、僕を振る理由として就職するって言ったことを使っているのかと思って、」

「ごちゃごちゃうるさい、あたしと同じ大学に入るの? 入らないの?」

 その質問に関して僕は即答した。

「入る、入ります!」

「分かった。それならいいよ! 付き合ったげる!」

 よっしゃぁぁぁぁ‼ ん、待てよ? 昔からバカだよね? って何だ? 昔から僕のこと知ってるのか?

「昔からって僕のこと、」僕が言い終わる前に先輩はこう言った。

「みっちゃんって覚えてる?」

「みっちゃん? もしかして先輩、幼稚園の頃よく遊んでたみっちゃん⁉」

「そうだよ! 何で気付かないんだよ! あたしずっと気付いてたんだからね?」

「そ、そうだったのか。昔、僕なんかバカなことしたっけ?」

「あたしが犬にかまれそうになった時に、あんたがあたしを庇って腕噛まれて、次の日にはもうケロッとして、一緒に遊ぼうぜ! って言っててさ。あたし、あんたに嫌われたと思ってその時一日中泣いてたんだからね。あんた、ほんっとうに相手の気持ちが分からない奴だよね」

「すみません」僕がうつ向いていると、

 チュッ 先輩が僕のほっぺたにキスをした。

「えっ⁉ 先輩、今・・・・・・」

「先輩じゃなくて美風、みっちゃんでも良いけど。あたしは幼稚園児の頃からあんたのこと好きだったから」

 僕は嬉しくて思わず笑みがこぼれた。

「行こっか」美風にそう言われ僕たちは駅に向かって歩き出した。

 僕が手を繋ごうとしたら、美風もそれに応じて手を繋いでくれた。

 同じ大学に何て入れるのかな? その時の僕には不安もあった。仮にも美風は学年一位の成績で、僕の成績は中の上。きっと美風はこの地域で一番の大学に行くに違いない。大学に入学できなくて振られるってことにならないように、僕も毎日勉強しないとな。よし、僕も勉強頑張るぞ‼

 僕は美風の手をぎゅっと握り、心の中でそう誓った。

 それから時は経ち僕も社会人になった。あの時大学に行く選択をしてよかったと思っている。あの時美風がいてくれたおかげだな。僕は一流企業に勤めて、バリバリ仕事をして、今は二人の子どもに恵まれ幸せな家庭を築いている。

 今日は休日で、奥さんはまだ横で寝息を立てている。僕が奥さんの顔を見ていると、懐かしい思い出がよみがえってくる。あの時、僕が美風に告白していなかったら、きっと高卒で働いていたに違いない。勉強を頑張れたこと。いい会社に勤められたこと。美風には今でも感謝している。

 そんなことを思いながら今の奥さんを眺めていると、奥さんが目を覚ました。

「ん、んん~」奥さんは伸びをした。

「おはよう。今日はお寝坊だな、美風」  

以上になります!

今回は文字数がオーバーしそうだったので、  所々端折って書きました。

ちょっと読みにくい文章になってしまいましたが、ご勘弁くださいm(_ _)m

今回はこれで終わりたいともいます。ありがとうございました!!(≧▽≦)

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