主人公:神崎 明人(かんざき あきと)
ヒロイン:生花(せいか)
俺の名前は神崎明人、大学一年生だ。どこにでもいる普通の大学生。俺は大学に入ってから親元を離れて一人暮らしを始めた。そんな中、今回は俺が経験したちょっと不思議な出来事を話そうと思う。つまんねぇかもしれないけど、温かい目で見てくれたら嬉しいな。それじゃ、早速話していくぜ!
友人A「明人、今日カラオケ行かないか?」
「良いぜ、その後はもちろん居酒屋で飲みだろ?」
友人A「当たり前! せっかくの夏休みなんだしな」
その日、俺はいつものように友達とカラオケと居酒屋での飲みでクタクタになるまで遊んだ。家に帰ったのは深夜の二時くらいだっただろうか。虫たちの音色が夏の夜を輝かせてくれる。
あ、そうそう、大学一年生でお酒を飲んでるけど、通報はしないでくれよ。学校ってのは友達作るためにあって、学校が終わったらそいつらとバカなことやるために生きてるって思ってんだ。そいつの邪魔はしないでくれよ!
俺は家に帰るとすぐにエアコンの冷房ボタンを押した。
「家ん中あっちぃ~。外の方が涼しいんじゃないのか?」
俺は買ってきた酎ハイを冷蔵庫から取り出すと、ベランダに出て星を眺めながら飲み始めた。そして、スマホを取り出すと、明日の予定を確認しだした。
明日もバイトは無いし、洗濯物も溜まってないからコインランドリーには行かなくていい。友人Aは明日バイトって言ってたから、・・・・・・友人Aがバイト終わったらカラオケオールでもするか!!
俺がそんなことを考えていた時に、突然誰かに話しかけられた。
「ねぇねぇ、こっち来てほしいんだけど。」
「はい!?」
俺の家は3階だったので、すぐにベランダから下を見た。すると、女の子が一人立っていて手を振っている。女の子は中学生くらいの年齢で、髪を茶色に染めていた。
「ねぇ、こっち来てってば!」
女の子がそう言ったのだが、スマホを見ると深夜の二時過ぎだったので俺は下まで降りるのが面倒くさかった。
「ごめんな嬢ちゃん、もう深夜の二時過ぎてるし、補導される前に帰った方が良いぞ」
「あたし補導されないもん」
「補導されるか・されないかは、運が良いか・悪いかによるんだよ。今まで補導されなかったのはたまたま警察に見つかってなかったからなんだぞ? 今日は補導されるかもしれないし、もう帰った方が良いぞ」
「違う、そういう事じゃない」
ん? 俺が言ってる事は合ってると思うけどな。
「どういう事なんだ?」
「あたし魔法が使えるから捕まらないの」
なるほど、見た目も中学生くらいだし中二病ってやつか。髪の毛も茶色に染めちゃってるし。あの髪色で学校行ったら怒られるぞ~(笑)。まぁ、夏休み中だけ染めてるのかもしれないけどな。
俺はそんなことを考えた後、酒に酔っていたのもあってちょっとばかり意地悪をしてみたくなった。
「そうか、じゃあその魔法ってやつを使ってみてくれよ。そしたら降りてってやるよ」
「本当? じゃあ今から使うね!」彼女は木の棒のような懐中電灯を俺に家に向けて何語か分からない言葉、恐らく外国語を喋りだした。
へぇ~。中学生くらいだけど、外国語ができるんだ。ってことはハーフなのかな? あの見た目で実は大学生で外国語専攻してたりして。めっちゃガキにしか見えないけど。
俺がそんなことを考えている間に、彼女は外国語? を喋り終わった。
「はい、魔法使ったよ」
俺は適当に返事をすることにした。
「おお~! 凄いじゃん! 補導されるから帰ろうな」
「は? 魔法使ったら降りて来るって言ったじゃん!」
「そうかぁ、そんな日もあったなぁ、懐かしいなぁ」
「何で意地悪するの!! 早く降りて来て!!」
「ん、じゃあ何の魔法を使ったのか言ってみろ」
「あんたの家のエアコンのボタンが全部暖房になる魔法」
「そうか、じゃあ確認してやるから待ってろ」
俺はそう言って残りの酎ハイをグビッと飲むと家の中に入った。すると、中は本当に暖房が付いていて灼熱地獄だった。
酔っぱらって冷房と暖房間違えて押したか⁉ いや、あの女の子が言っていた魔法とあまりにも重なりすぎてる。それに、仮にもし俺が酔っぱらって冷房と暖房間違えて押したとしても、それを俺の家の中まで見えないあの女の子が知ってるとは考えづらい。玄関のカギを確認したが、鍵がかかっていたので、入ってきて暖房を押してから外に出てって俺に話しかけたってことはまずない。
俺はすぐにベランダに出た。
「君、本当に魔法が使えるのか⁉ 早く直してくれ!」
「やだ、来てくれるって言ったじゃん! 来てくれないと直さない」
俺はすぐに玄関から外へ出てった。
「ほら、来てやったぞ。直してくれ」
「分かった」
彼女はまた何語か分からない言葉を喋り始めた。俺は外国語じゃなくて魔法の詠唱なんだなってこの時初めて分かった。
「はい、直ったよ」
「そうか、ところで何で俺に来てほしかったんだ?」
「あたしね、地球に初めて来たの。それで・・・・・・。」
「それで何だ? 道が分からないのか?」
「ううん、あたしの世界のお金と地球のお金が違うからお金無いの」
はは~ん、こりゃ金が無いから金よこせってことだな。全く都合のいいガキだ。あげる訳ないだろ。俺だって毎日遊び呆けているけど、週5でバイトしてんだぞ!
「ほ~ん、そりゃ残念だったな。あいにく一人暮らしの大学一年生は金がないもんなんだ。残念だが、金のことに関してなら他を当たってくれ」
「えっ!? あたしのこと見捨てるの!? エアコン直してあげたのにぃぃぃぃ!!」
「エアコンは元々お前が暖房しか使えないようにしたんだろうが!」
「やだ! お腹空いた! 何か食べたい!」
「こら、そんなに騒ぐなよ」
モブA「うるせぇぞ!! 何時だと思ってんだ!!」
「・・・・・・すいません。」
何で俺が謝らないといけないんだよ。全くもう。
「とりあえず暑いから、あんたの家入れて」
はぁ、また騒がれても迷惑だし、家くらい良いかぁ。
「分かったよ、ついて来い」
俺たちが家に入ると、さっきの灼熱地獄のような部屋とは一変していて、冷房の効いた涼しい部屋になっていた。
「おじゃまし、ます」
「ところでさ、君の名前は?」
「あたしは生花(せいか)、あんたは?」
「俺は神崎 明人(かんんざ きあきと)だ」
「カンザキアキト??? 名前長っ」
なるほど、こいつの世界じゃ名字が無いんだな。確かに日本でも何百年後かに全員の名字が佐藤さんになるって言われてるし、名字が無いのも納得できる。
「明人って呼んでくれ」
「分かった、よろしくね明人」生花はそう言って、手を出した。が、その手は握手ではなく両手でお金をよこせと言わんばかりの格好だった。
「こじきかよ!! 金無いって言っただろ! せびるなよ!」
「えーお金無いんだもん」
「とりあえず何か売って金にしたらどうだ? 何か持ってないのか?」
「う~んと、魔法の杖は売れないし」
この木の棒のような懐中電灯、魔法の杖だったのか、確かにコスプレ用の魔法の杖っぽさはあるな。
「服売ったら裸になっちゃうし、あたしの世界のお金は使えないし、」
「ちょっと待て、そのお金見せてみろ!」
「え? これお店で使えないって言ってたよ」
俺は生花の世界のお金を手に取った。見た目は完全に金で出来ているようにしか見えなかった。小さいのに重さもずっしりと重い。メダルやコインのようにも見えるが、真ん中には知らない言語が刻印されていた。俺は生花の世界のお金を見てハッとひらめいた。
「生花、もしかしたらこれ売ればお金になるかもしれないぞ!」
「え、あたしの世界のお金を売って地球のお金にするの? どうやるの?」
「いや、待て、もしかしたらって言っただろ。これ何でできてるんだ? 金か?」
「そりゃそうじゃん、金貨だもん。でも、もし売れたとしても純金なんてそこら中に沢山転がってて大した金額にならないんじゃない?」
なるほどな、やっぱり純金か。勿論だが地球では純金がそこら中に大量に転がっているわけじゃない。しかも1グラム一万円を超えるくらいの超高級金属だ。最近じゃ金自体の価格が大高騰しているってニュースでやっていたし、こいつが危ない人に捕まってたら、この金貨を盗まれて本当の一文無しになってたところだったな。とりあえずグラムを量ってみるか。
「ちょっと待っとけ」
俺はキッチンに行き、キッチン用のはかり機で重さを量った。すると、ぴったり30グラム! つまり、1グラム一万円だったとして三十万円⁉ 超大金じゃねぇか!!
「生花、これどのくらい持ってるんだ?」
「百枚くらいは持ってきたよ」そう言うと、生花はカバンの中を開けた。そこには白い袋が入っていてその中に大量の金貨が入っていた。
「お前やべぇって!!」俺はガキんちょがこんだけの大金を持ち歩いていたことに驚きすぎてそれしか言葉が出てこなかった。
「なに、どうしたの? 金貨ってそんなにお金になるの⁉」
「なるよ、これだけあれば遊ぶお金になるどころか大金持ちになるよ」
「本当⁉ やったぁ~!!」
「ってかお前いくつだよ、そっちではこれだけの金貨集めるのに苦労するんじゃないのか?」
「う~んと、あたしは今年で12歳で、苦労する人は苦労する。魔法があんまり得意じゃない人は苦労するかな。あたしの世界には学校で魔法の授業があって、そこで他の人より魔法が使えればそれほど苦労しないけど、魔法が得意じゃない人は生きていくのにすっごく苦労するの」
中学生じゃなくて小学生かよ!! 魔法が得意じゃない人はってことは、こっちでいう学校の座学の授業が、生花の世界の魔法の授業みたいなもんかな。こっちでも座学の勉強できない奴は苦労する人が多いしな。偏差値の高い大学を出て尚且つ資格を持ってる奴が良い会社に勤められる。偏差値の低い大学に入った奴は、大学で高い大学の奴ら以上に資格を持ってることが企業に就職するときに重要視される。会社に入ったら、仕事の内容やどんな仕事をするかを勉強して、会社の戦力になるにはどうすればいいかを勉強する。結局地球じゃ勉強が付いて回ってるんだよな。それがこいつの世界では魔法って事か。
この金貨がどれくらいの価値かは分からないけど、12歳でこれだけたくさんの金を持ってるなら、相当努力したんだろうな。生花って努力家なんだな。
「生花は凄いな、12歳で魔法の勉強を沢山して、努力して、俺も見習わないとな」
「魔法は努力というより才能だよ、でもあたしのことは見習ってもいいよ」
なんだと⁉ 凄いと思った俺の気持ちを返してくれ!! 努力して無いならお前から見習わないといけない事は、残念ながら全くないんだ。マジでな~んにも見習うべきところが無いんだよ!!
「とりあえず、今日はファミレスで飯奢ってやる、明日その金貨売ったら飯代は返してくれ」
「ごはん! やったぁ! あたしお腹ペコペコだよ」
「そうか、24時間営業の店が近くにあるからそこ行こうな」
俺たちはファミレスで食事を済ませ、再び家に帰ってきた。
「今日はもう遅いから寝るぞ」俺はベッドの隣に布団を引いてそう言うと、生花が丁度大きなあくびをしているところだった。
「はぁ~、あたしも眠くなってきちゃった」
「それじゃあ、また明日な、お休み!」
「お休み~」俺は電気を消して横になった。
しかし、俺は色々なことが気になってすぐには眠れなかった。
生花はどこの世界から来たんだろう? そもそも魔法が使える世界ってどんなところなんだろう? なぜ大勢の人の中から俺に話しかけたのだろう?
俺は考えても分からない疑問ばっかりが浮かんだので、聞いてみることにした。
「なぁ、生花」
「す~す~す~」生花はすやすやと寝息を立てている。
寝るの早っ! まぁいいか、明日聞いてみよう。
次の日
「起きてください!! 朝ですよ!!」
俺は生花の声と共に目を覚ました。スマホで時計を見ると、時刻は朝の7時だった。昨日は何だかんだで3時30分くらいに寝ている。あまりにも起きるのが早すぎる。そもそも俺は夜型だから、朝早く起きるのはめちゃくちゃしんどい。
「もうちょっと寝かせてくれぇ~」
「やだ! 早く遊びに行きたい!!」生花はそう言うと俺の足を引っ張って、俺のことをベッドから引きずり下ろした。
このわがままキッズめ。はぁ、エナジードリンクでも飲んで無理やり起きるかぁ。
俺は冷蔵庫からエナジードリンクを出すと、一気に飲み干した。
「何飲んでるの?」
「眠い時に起きてられるようになる飲み物」
「ふ~ん、あたしも飲みたい」
「いいよ、ほれ」俺はエナジードリンクを生花に渡した。生花は一口飲むとこう言った。
「不味い、これやっぱ要らない。眠くならなくなる飲み物他に何かないの?」
「ん、コーヒーならあるぞ」
「じゃあそれ飲む」
「甘いのと苦いのどっちがいい?」
「それさ、苦い方選ぶ人いるの?」
「地球に人だと大体半分くらいいるんじゃないのかな」
「地球の人って、半分くらいバカ舌なの? 苦いのが美味しいわけないじゃん」
「そんなに言うなら一回飲んでみたらどうだ?」
「まぁ良いけど、要らなかったら返すからね」生花はそう言って、ブラックコーヒーを一口飲むと、こう言った。
「ちょっと苦めのお茶だね。これなら飲めそうかも」
「地球の人はバカ舌じゃなかっただろ?」
「え、まぁうん。今度は甘い方も飲ませて」俺は甘い方のコーヒーも渡した。
「あ、こっちの方が良い! ジュースみたいじゃん!」
「地球の人はジュース見たいって言って飲む人は少ないけどな」生花がコーヒーを飲み終わると、金貨を現金に換金しに行った。
歩いている道中で、昨日の夜に考えていた質問をしてみることにした。
「生花はどこの世界から来たんだ? 地球じゃないんだろ?」
「ん、えっとね、リズナって所から来た。ここからだと、宇宙の箱の外にある宇宙」
「宇宙の箱の外にある宇宙???」
「宇宙ってね、大きな箱になってて、その中にブラックホールがあったり、太陽系があったりするの。そんで、宇宙の突き当りの壁の向こうにはまた大きな箱の宇宙があって、その壁を越えて来たってこと」
「なるほど、どうやってきたんだ? 宇宙船か?」
「宇宙船なんかで来れるわけないじゃん、そもそも壁超えられないし」
「あ、確かに、宇宙って壁で囲まれてるんだもんな。じゃあどうやって来たんだ?」
「魔法を使ってワープしてきた」
ワープか、エアコンの温度を変えたりワープしたりって、魔法で何でもできそうだな。こっちの世界のお金も作ろうと思えば作れたんじゃないのか? 犯罪になるからこいつには絶対言わないけどさ。
「へぇ~、凄い世界なんだな」
「凄いかどうかは分からないけど。あたしからしたら、魔法も使わずにこんなにいろんな建物を建ててる地球の方がよっぽど凄いと思うけどね」
「確かに、それは俺も凄いなぁって思ってるよ。建物だけじゃなくて地球にはいろんな職人がいて、色んな所で働いている人がいて。俺はまだアルバイトだけしか働いた事がないけど、大人の社会を回している人たちのことを凄いなって思ってるよ」
「ふ~ん、意外とまともだね、ただの金に汚いやつなのかと思ってた」
「学生のアルバイトじゃ金がいくらあっても足りないんだ。 あと、魔法が使える世界ってどんなところなんだ?」
「建物は地球と殆ど変わらないけど、モンスターがいてそいつらを倒してお金を稼ぐ仕事があるよ」
「何だか漫画みたいな世界だな」
「地球の漫画は読んだことないから分からないよ」
「それもそうだな、最後にもう一つだけ質問していい?」
「いいよ、別に最後の質問じゃなくてもいいよ。それともその質問が終わった後、声が出なくなって喋れなくなる魔法かける?」
「めちゃめちゃ怖い魔法かけようとすんな!!」
「冗談だよ(笑)」
「とりあえず今は最後の質問にするよ。大勢人がいる中でさ、なんで俺に話しかけたんだ? 適当に話しかけたら俺だったのか?」
「いや、違うよ。最初から明人に話しかけるって決めてたの。リズナに居た時に、明人が私の面倒を一番よく見てくれるって占い師が言ってたの。言ってたって言っても、占い師が明人の顔を見せて、ここに住んでる奴じゃよ。って言ってただけだけどね。だから、明人の名前とかは知らなかったの」
「ほーん、それだと何で俺が選ばれたのかよく分からないな」
「でも、実際にこうして私の地球観光を手伝ってくれてるでしょ?」
「あ~。言われてみれば確かに」俺たちはその後も他愛のない会話をしながら金の買取所に着いた。
**********
店員「確かに本物の純金ですね。ところで何でこんなに沢山あるんですか⁉ しかも全部現金でなんて用意できませんよ! いくらあると思ってるんですか!!」
やっぱり不自然だよなぁ~笑 そして案の定全部現金化はできないっと。
「うちの家宝だ。江戸時代から代々受け継がれてきた家宝なんだよ」俺は適当な嘘をついた。
「家宝・・・・・・。」店員さんは固まってしまった。
「それじゃあ、とりあえず10枚だけ売るよ」
店員「分かりました!!三百十万円で買い取らせていただきます!」
俺たちは無事に現金化に成功すると、店を出た。
「生花、金は手に入ったけど、どこに行きたいんだ?」
「う~んと、美味しいものいっぱい食べたい!!」
それから俺たちはいろんなお店をはしごして、美味しいものを山ほど食べた。途中でゲームセンターに行ったり、卓球やボーリングをしたりした。卓球をやった時は生花が魔法を使って打ち込んできたので、球がはじけ飛んでしまい、できるだけ魔法を抑えて打つように言った。
その後、生花は何日も滞在すると言い出したので、次の日は海で遊んだ。
海では生花が魔法で魚を捕まえ出したので、人目のつく所で魔法を使わないように言ったら、不貞腐れてしまった。
それから暫くして山登りに行った。
山登りでは生花は疲れないどころか汗も掻かずにガンガン進んでいくので、生花のペースに合わせていた俺はヘトヘトになってしまった。生花とはもう二度と山登りに行くことはないだろう。俺たちは夏休みが終わるまで、とにかく色々なところで遊びつくした。
夏休みの最終日は行列ができるハンバーガーやでハンバーガーを食べた。
「はぁ~、食った食った! 流石行列ができるだけあってめちゃくちゃ美味しかったぜ」
「明人、今日も楽しかったね!」
「ああ、そうだな。もう暗いしそろそろ帰るか?」
「うん、それはそうなんだけど・・・・・・。」
「どうした? 腹でも壊したのか?」
「違うよ!!」生花はそう言った後、深刻な表情をしてこう言った。
「あたしね、今日リズナに帰らないといけないの」
「ああ、なるほどな。俺も丁度学校が始まるから毎日遊ぶことはできなくなるんだよ。生花が帰る時期としては丁度いいかもしれないな。地球観光は楽しかったか?」
「うん、楽しかった。けど、・・・・・・」
「どうした?」
「もっと一緒にいたかった」
「また来ればいいだろ? 生花はまだ子供なんだから、親が心配してると思うぞ?」
「まだ子供・・・・・・。明人って結婚するならどんな人が良いの?」
これ、生花は俺のこと好きになってるやつな。子供って分かりやすい。でも、ちゃんと家に帰さないと、親御さんが心配すると思うし、ここは絶対に無理なこと言って諦めてもらおうかな。
「俺は年上の人が好きだな。サバサバしてて頼れるお姉さんみたいな人」
「そう・・・・・・なんだ」
ごめんな生花、いつまでも地球で遊んでてもきっとお前のためにはならないんだよ。リスナって所ではちゃんと仕事もしてお金も稼いでいたみたいだし。帰る時はしっかり帰らないとな。
「分かった。じゃあ、次合うときには明人の理想の人になってるからね!」
「おう、頑張れよ!」
「それじゃ、明人の家からワープしてリズナに帰るね」
「そうか、わかった」俺たちが家に着くと生花がこう言った。
「明人、今日はありがとう。あのさ、この金貨全部預けておいてもいい?」
「何でだ? 多分俺、使っちゃうぞ?」
「ダメ! これ使ってさ、あたしがまた遊びに来たときは色んなところ案内してね! 約束の証として持っておいてよ」
「そういう事か・・・・・・分かった。じゃあ約束するよ。次はいつ来るんだ?」
「すぐに来ると思う! けど、正確な日にちは分からないの」
「来る時間とかも分からないのか?」
「また前と同じ時間だと思う」
「深夜の二時か?」
「うん、そのくらい」
「ずいぶん遅い時間だな。(笑) 分かった、またすぐに来いよ!」
「うん、ありがとう! それじゃあね!」
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俺の名前は神崎 明人。極々一般的な大学四年生だ。そんな俺には誰にも言えない秘密がある。俺の家には本物の金が置いてあるってことだ。それももの凄い量の金が。なんで俺が金を持っているのかは分からない。思い出せないんだ。誰かに貰ったのか預けられたのか。とにかくすごい量の金が置いてある。
換金することも考えたが、何となくこれは持っていないといけないような気がして換金そることは止めた。
昔から夜型だったが、今はさらに夜型になっている。深夜の二時が一番楽しく過ごせる時間帯なのだ。何故かは分からないが、体がウキウキしてくる。まぁ、夜のテンションってことなんだろうな。
大学四年生だから、就活で忙しい。お金が無い時はこれを売ることも本気で考えた。それでも、何か大切な物のような気がして、忘れてはいけないことを忘れているような気がして、売ることを躊躇っている。
「はぁ~、今日の面接も手ごたえ無かったなぁ~。このままニートになったどうしようかなぁ~。はぁ~、先が思いやられる」ため息をつきながら家に帰った。
時刻は深夜の二時、この時間帯は俺の一番好きな時間帯だ。何となく心地よく、わくわくするような心地の良い時間帯。
今日の面接のことは忘れて、また次で頑張るぞ!! 俺はそう思って、缶ビールのふたを開けた。
ゴクッ ゴクッ ゴクッ
「かぁぁぁー、うめぇ! これで明日も就活頑張れるぞ!」
ピンポーン (インターホンが鳴る音)
こんな夜中に誰だよ! 今深夜の二時だぞ⁉ ご近所で何かの事件でもあったのか⁉ 何かヤバイトラブルか⁉
ピンポンピンポンピンポン
「はいはいはい、今出ます~!」
ガチャ 俺は扉を開けた。
すると、そこには茶色い髪の超美人な女性がポツンと立ってた。見た目は間違いなく年上で、しっかりしてそうな性格だって雰囲気がもの凄いあった。・・・・・・が、間違いなく俺にこんな美人な知り合いはいない。
「・・・・・・だ、誰ですか?」
「えへへ」女性は嬉しそうに笑うとこう言った。
「お久しぶりです」
俺はその女性の声を聴いた途端、空から何かが降ってくるような感覚があった。深夜の二時、この時間には懐かしい心地よさがあった。
それが何故か、分かったような気がした。
以上になります。ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m
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