「あの黒いのと赤いのは龍だな。黒い龍と赤い龍が戦ってるってことか」
「か、彼方隠れて。見つかったら殺されちゃう」
「ああ、そうか。龍はどこの世界でも強い生き物なのな」
「のんきなことしてんな!」アリサが茂みに隠れているので、彼方もその場の茂みに隠れた。
「グオォォォー」赤い龍が黒い龍に襲い掛かっている。黒い龍も反撃しているが、圧倒的に赤い龍の方が強く、赤い龍に吹き飛ばされてしまった。黒い龍は木にぶつかるとぐったりと倒れ、そこに向かって赤い龍が近付いていた。
彼方は茂みに隠れながらコソコソっとアリサの方に移動した。
「アリサ、このままだと黒い龍が殺されちゃうんじゃないか?」
「それはそうだと思うけど・・・・・・あ、変なこと考えないでよ」
雷光使えばあの攻撃なら避けれるよな。そもそも赤い龍そんなに素早くないし。
「なんか可哀想だし、ちょっくら行ってくるわ!」
「え、何考えてるの! あ、待てバカぁ!」
彼方は雷光を使い、黒い龍の横に飛び出した。そして、すぐさま伝雷を使い、赤い龍を攻撃した。
「グゴッ」赤い龍は彼方に気が付き、彼方を見た。
掠り傷一つ付いていないな。まあいいや、地道に攻撃してたらいつか赤い龍も疲れて帰るだろ。
「そこの赤い龍! 虐めは良くないと思うぞ」彼方がそう言い、伝雷を溜めた。赤い龍は少し睨んだが、攻撃してこなかった。
あれ? 何で攻撃して来ないんだろ?
赤い龍はチラッと黒い龍を見て「グゴォォォー」と叫ぶと、どこか飛び去ってしまった。
「結局攻撃してこなかったな」彼方がボケッとしていると、アリサが茂みから叫びながら出て来た。
「このバカたれぇぇぇぇ!」アリサは彼方の事をボコボコにした。
「何か言うこと無いのか? バカ彼方。・・・・・・バ彼方」
「すびばぜんでじた」
「ったく、死んだらどうするつもりだったの!」
アリサからの説教を食らっていると、倒れていた黒い龍が首だけ動かし、こちらを向いた。
「あ、・・・・・・彼方動いた」アリサが彼方の後ろにしがみ付いて隠れた。
彼方は黒い龍を見ると、体中傷だらけで、羽や体からは出血していた。
「なあアリサ。あの龍にヒールを掛けれないか?」
「え?」
「さすがにさ、この龍も助けているのに攻撃を仕掛けてきたりはしないと思うんだよ」
「まあ・・・・・・そうか、分かった。やってみるけど本当に平気かな?」
「うーん、聞いてみるか。そこの黒い龍、今から回復魔法かけるからじっとしててくれよー!」
黒い龍は一瞬目を大きくしたが、頷いた。
「頷いているし大丈夫だろ」
「分かった。やってみる」二人は黒い龍に駆け寄った。
「「「心身完全治癒」」」
アリサは黒い龍に回復魔法を掛けた。ボロボロだった体の傷が回復し、黒い龍が起き上がった。
「何か僕が知っている回復魔法よりすごいやつ掛けた?」
「うん。体が大きかったのと、戦ってて衰弱しているから、元気になるようにしてあげた」
「なるほど、そういう事もできるのか」
「それより彼方、ここにいるとさっきの赤い龍が戻ってくるかもしれないからもう帰ろうよ」
「そうだな。腹は減ってるけど、しょうがないか。じゃあな黒い龍!」
「ばいばい黒い龍!」
彼方とアリサは、予定通りまっすぐ進んで予定通り分かれ道を右に進んだ。
「なあアリサ、どうすんだよあの龍」
「知らないよ。さすがに家に入らないから飼えないよ」彼方たちの後ろには黒い龍が付いて来ていた。仕方がないので、二人は立ち止まると、彼方が黒い龍に話しかけた。
「きみ、大きすぎて家に入らないから飼えないんだよ。付いてきてもダメなんだよ」
「グガァ!」黒い龍は返事をしたようにそう言うと、光りだした。
「何だ、どうしたんだ⁉」光った黒い龍は徐々に小さくなり、青髪美少女になった。
髪は紺色に近い青で、髪の先端が黒色になっていた。瞳の色も虹彩の部分が髪色と同じで紺色に近い青色だった。黒い半そでのパーカーを羽織っていて、ミニスカートは白い色をしていた。スカート自体は白くなければ高校の制服のようにかっちりとしているものだった。身長はアリサよりちょっと高くて150cmくらいだろうか。
「これなら大丈夫でしょ!」黒い龍だった少女はそう言った。
「おうおう、何かアリサみたいなキッズになっちまったな。アリサ、これなら飼えるんじゃないのか?」
「飼うって言わないでよ、バカぁ!」彼方は青髪少女に腹を殴られた。
「ぐっ、ごはぁ!」その威力は凄まじく、彼方はその場に倒れた。
「可愛い~!」倒れている彼方をよそに、アリサは青髪少女に駆け寄った。
「黒い龍ちゃん女の子だったんだね! 名前は何て言うの?」
「クウって名前なの! あなたはアリサって言うんだよね」
「うん、こっちのバカが彼方だよ。彼方はバカだから人間になったクウちゃんのことも飼おうとしちゃったの。許してあげてね」
「彼方はバカだけど頭良かったよ」
「どうして?」
「クウ、最初彼方のこと鳳凰だと思ったの、それで赤い龍も帰ったの」
「鳳凰? 彼方が鳳凰の羽根持ってるから?」
「そうだと思うの。クウも鳳凰だと思って怖かったよ」
アリサはうつ伏せで倒れている彼方のカバンから鳳凰の羽根を取り出した。
「これに龍を追い返す効果があったなんて思わなかった。クウちゃん、彼方はそんな効果があると知ってた訳じゃないの。凄くバカだから油断しちゃダメだよ」
「そうなの? もうバカな事しっかり分かったから油断しないよ」
僕は油断できない程バカなことにされてないか?
「クウは鳳凰とは戦いたくないの、強すぎて勝てないの」
「そうなんだ、クウちゃん大丈夫だよ。あたしたち鳳凰じゃないからね」
「分かった、ありがとうね」アリサがクウの頭を撫でていると、彼方が立ち上がった。
「いててて、それじゃ、帰るか。このくらいの大きさなら一緒に住んでいても問題なさそうだし、人間にしか見えないし。今日集めた核がどれくらいの金額になるか分からんから、早めに帰って査定してもらおうぜ」
「そうだね」
カザス王国に帰ると、赤い月が顔を出し始めていた。門の前まで来ると、アリサが立ち止まった。
「あ、クウちゃん通行できないかも」
「何で?」彼方がそう聞くと、アリサが説明してくれた。
「ここを通るなら通行許可証か、在留証明できるものが必要なの。それか、どっかの村の住民票。またはそれに代わる何か。それがあって初めて通行できて、通行できると中で働くことができるって規則になってるから」
「これならあるけど平気?」クウがポケットから身分証明書のようなものを取り出した。
「クウ、それどこで発行したんだ?」
「クウは龍人族だから、村でもらえるの」
「クウちゃんの身分証か、これなら平気だと思う」アリサがそう言ったので、三人で門番のところに行った。
「こんにちは、お二人は・・・・・・そうだったサーファの子たちだった。こちらのお嬢ちゃんの身分証見せてもらえかな?」クウが身分証を見せると、門番は驚いた様子だった。
「これは、龍人族の方でしたか。失礼しました。是非お通り下さい! いや~。生きている内に龍人族の方に合えると思っていなくて、嬉しいです! そうですね、こちらもお持ち下さい、本来なら滞在期限は一ヵ月ですが、三ヵ月分の在留証明になります」
龍人族の身分証の効力強すぎじゃないか? 何だろう、この絶対的信頼感は。
「ありがとうです!」クウはそう言うと、門から入って行った。
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今回はここまでになります!
noteもやっているので、是非読んで下さい!!
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