今日から君が主人公 4章 ~初めての戦闘~

バトル

「海斗、起きて、起きて」

「ん~。ヒナか。もう朝か」

「訓練するわよ!」

「訓練?」

「そう。訓練」

「何で?」

「何で? ってあんたバカじゃないの? 勇者のくせにあたしより弱くてどうすんのよ」

「いや~。一生かかってもお前には勝てないだろ」

「勇者なら勝てるようになるわよ、さっさとあたしより強くなって」

「そんなこと言われてもなぁ。戦ったことないしなぁ」

「ごちゃごちゃうるさい。練習用のゴーレム用意したから戦って」

 窓から外を見ると、一体の巨大なゴーレムがトコトコと道を歩いていた。

「はい木刀」

「木刀で戦うのか⁉」

「そうよ。何発か当てればゴーレムも崩れてくるから。はい、いってらっしゃ~い」

 ヒナは二階の窓から海斗を捨てようとした。

「ちょっと待てお前」俺は焦っていたのだが、残念ながらそのまま捨てられてしまった。

「うわ~あ~」地面に着く直前に身体を捻って無事に着地した。

「危ないだろ!」ヒナに向かって俺はそう言うと、ゴーレムの方を見て戦う構えを取った。

「普通は危ないじゃ済まないんだけどね、これが勇者の身体能力って事かしら。回復魔法はかけてあげなくても大丈夫そうね」

 ヒナはそう呟き、暫く二階の窓から俺のことを見守ることにした。

「ゴーレムかぁ。どうやって勝つんだこれ。とりあえず頭殴ってみるか」俺はこっそりとゴーレムの背後から忍び寄った。

 こそこそこそ。

 俺はとりあえずゴーレムの頭を殴りつけてみる事にした。

「フゴッ」ゴーレムはびくともしなかったが、こちらに気付いて襲い掛かってきた。

 俺はゴーレムの右からのパンチを一旦後ろに跳んで避けた。

 ドゴッ ゴーレムの攻撃が当たった地面には拳の形の穴が開いていた。

「あっぶねぇ! 今のくらったら体全身骨折どころじゃ済まないぞ」その後も何度か肩や足などを殴ってみたのだが、ゴーレムはビクともしない。攻撃は難なく避けられるようになってきたが、ゴーレムを倒せるビジョンは全く浮かばなかった。

「これじゃらちが明かないな」

 その後も隙あらば攻撃、隙あらば攻撃と、何度も攻撃をしていたのだが、ゴーレムを倒せる気配は一向に無い。そんな時、頭の中で何か声が聞こえてきた。

(((ピピピ 身体強化スキルを獲得しました。)))

「おっ。スキル覚えた。人生初のスキルが身体強化かぁ~。・・・・・・どうやって使うんだ?」

 身体強化のスキルを覚えたのは良いものの、スキルの使い方が分からない。

「もう強化されてんのかこれ? 結構簡単にかわせるようになってきてるし」

 攻撃を仕掛けてみたがさっきと変わらずゴーレムはびくともしない。

「何も変わんねぇな。とりあえず・・・・・・唱えてみるか」

「「「身体強化」」」

 そう唱えた途端、身体が急に軽くなった。

「おお! おお! これならいける」俺はもう一度戦う構えを取った。

「は~。は~。」

 何となく息を吐いて体の力を抜くと、今度は少しだけ息を吸って息を止めた。そして、ゴーレムの方に思いっきり跳んだ。

「でーい!」

 海斗は一瞬でゴーレムまで間合いを詰め、ゴーレムを切りつけると、勢いそのままゴーレムの後ろまで飛んで行った。切られたゴーレムは真っ二つになり、そのまま崩れて消えてしまった。

「早っ」ヒナは思わずそう言った。

 海斗がゴーレムを倒した後、海斗が消えていくゴーレムを見て突っ立っているので、ヒナは海斗の所へ降りて行った。

「あんた身体強化使えたの⁉」ヒナは驚き、話しかけた。

「今覚えたぞ」

「それ特技でしょ? 唱えなくても頭の中で思い浮かべるだけで良いのよ」

「そうだったのか。じゃ、次からそうするわ。・・・・・・ところで、身体強化ってどうやって解くんだ?」

「解除って言えば解けるわよ」

「そうなのか! あ、まって、多分・・・・・・解けたわ」俺は身体強化が解け、倒れ込んでしまった。

「体中がいてぇ」

「そりゃ、そうでしょ。あんなに早く動いたら。身体強化は時間でも解けるみたいね。それにしても使いにくい特技覚えたわね。一回使ったら身体が動かなくなるなんて」

「全身筋肉痛の痛みがはしってるんだけど」

「そのくらい我慢しなさいよ。トレーニングを怠った罰ね」

「俺筋トレとかはやってたけどな・・・・・・。」

「もっとしなさい」

「へいへい。とりあえず、勝ったぞ」

「あ、そう・・・・・・。本当は関節とか柔らかいところ狙って倒すものなんだけどね」

「それ先に言えよ!」

「自分で見つけるもんなの!」

 それにしてもあのゴーレムを真っ二つにするとは思わなかったわ。鍛えがいがあるわね。

「そういや、ゴーレムぶん殴ったのに木刀壊れてねえな。」

「ああ、その木刀はちょっと特殊なの。壊れにくくなる魔法が掛かっているのよ。」

「そうなんだな。とりあえずさ・・・・・・。」

「なに?」

「俺のこと家まで運んでくんね?」

 ヒナはクスっと笑った。

「はいはい、しょうがないなぁ」

(((面白くねぇよ! 倒れてんだぞ!)))

 ヒナは俺の肩を自分の肩に回した。

「いってぇ!」俺の体中に激痛が走った。

「もう、ちょっとくらい我慢しなさい!」

「いや、マジで痛いんだって。」ヒナはごちゃごちゃ言っている俺を家まで運び、ベッドで寝かした。

 ベッドに入って暫くすると、徐々に睡魔が襲ってきた。そして、その後すぐに眠りについた。

「あたしのことどう思ってるの?」

 ああ、またヒナの夢だ。

「俺はあたしのことどう思ってるのってば?」

 どうって聞かれてもな。

「何で答えないのよ」

 答えようとしてるだろ!

「あたしは海斗がいなくなったら寂しいよ」

 俺の声は聞こえてないのか。

「海斗がいるから、あたしはもう一人じゃないの」

 ・・・・・・そうだな。

「それじゃあ、もう行くね。バイバイ」

 ヒナが暗闇の方へ歩いていく。

「待て、行くなヒナ。そっちに行っちゃダメだ。また一人になるぞ!」

 ヒナがどんどん暗闇の方へ消えていく。

 行くなヒナ!

「行くなぁー!」

 俺は、はっとして目が覚めた。

「いってぇ」

 咄嗟に上半身を起こしてしまい、身体に激痛が走った。そして、冷汗が俺の体中を包み込んでいた。

「海斗、起きたの? 何で叫んでるの?」

 ヒナが二階に上がってきた。 トントン 扉をノックする音

「入るわよ。」

 扉を開け、ヒナが入ってきた。

「うわっ凄い汗ね」

「え、ああ」

「体拭いてあげるから待ってて」ヒナはそう言うと、タオルを取りに洗面所に向かって二階から降りて行った。

 またヒナの夢か。今の夢は何だったんだろうな。ヒナがあたしのことどう思ってるのとか聞いてたな。どう思ってるのか答えればいいのか? 夢のヒナには答えようとしてもダメだったな。現実のヒナに答えてみた方が良いのかな。

 俺がそう考えている内に、ヒナが二階に上がってきた。

「入るわよ」

 バケツとタオルを持ったヒナが扉から入ってきた。

「それじゃ、身体拭くから、服脱がせるわね」

「ああ、ありがと」

 ヒナは俺の上半身の服を脱がせ、体を拭き始めた。

「いってぇ」

「我慢しなさいって」

「へいへい。なあヒナ」

「なに?」

「俺もヒナがいないと寂しいぞ?」ヒナは頬を赤らめて、俺に顔が見られないくらい後ろに行き背中を拭いた。

「あっそう。そうなんだ。へー」ヒナはどうでもいいと思っているような言い回しをした。

「あたしは別に寂しくないけどね」ヒナは海斗に向かって強がっているようにそう言った。

「・・・・・・そうか。実はさ、またヒナが出てくる夢を見たんだ」

「へ~。あたしのことが夢に出てくるくらい好きなんだ」

「別にそういう訳じゃないんだけどな」

 ヒナは若干イラついた。

「そんで、ヒナがどっかに歩いて行っちゃってさ」

「そうなんだ。それで寂しくなっちゃったのね」

「いや、別にそういう訳でもないんだけどな」

「じゃあ、どういう訳なのよ!」

「いや、どういう訳って聞かれても・・・・・・。」

「何よ、それはあたしのことが好きって事なんじゃねーのかよ!」

「いや、それとこれとは別問題だろ」

「別問題じゃねぇよ! 夢にまで出て来てんだからそれは好きって事でしょ!」

「いやちげぇって。お前が勝手に夢に出てきたんだよ」

「もう、うるさい!」

 ヒナはそう言うと、海斗の背中を思いっきり叩いた。

「いってぇぇぇぇー!」

 海斗はそう叫ぶと、そのままうずくまってしまった。

 ヒナはハッと我に返り、どうしたらいいか分からなくなってオドオドしていた。

「・・・・・・海斗・・・・・・あの」

「いてぇだろヒナ」海斗にそう怒られ、ヒナは涙目になった。

「もう知らない! 海斗のバカ!」ヒナは扉から出てってしまった。

「何なんだよあいつ」

 俺はそう言うともう一度横になり、寝なおすことにした。

 夜、俺の部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。

「海斗? 起きてる?」

 ヒナか。

「起きてるぞ~」

「あのさ・・・・・・まだ怒ってる?」

「さっきのことならもう怒ってないぞ」

「・・・・・・そうなんだ・・・・・・あの」

「どうした?」

「一緒に寝ていい?・・・・・・その、ベッド一個しかないから」

「ああ、そうだな。一緒に寝ようか」

 海斗にそう言われ、ヒナは嬉しそうな表情を見せた。

「うん!」

 ヒナは俺のいるベッドに入り、横になった。

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次の日

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今回はここまでになります!!

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是非読んで下さい!!m(_ _)m

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