陰陽師(仮) 1章 ~凍てつく夜に~

シリアス

どうも!ラノブロです。今回はライトノベルになるのですが、タイトルがまだ決まっていないので、陰陽師(仮)で出させてもらっています。

後々変更になるかもしれないので、その時はご了承くださいm(_ _)m

主人公 高槻 翔馬(たかつき しょうま)

サブ 猫

 凍てつく寒さが肌を突きさすように包み込む冬の真っ只中。翔馬は雪が舞っている公園のベンチに腰を掛けると、ぼんやりと空を見上げた。握り拳の上には喧嘩でできた傷があり、滲んだ血がマイナス2度の世界ではすぐに固まる。翔馬は無言のまま、何となく視線を公園に戻すと、横たわっているヤンキーが何人もいる。そのヤンキーたちのことは何も考えず、もう一度空に視線を戻した。

「あ~。人生ってクソ詰まんないもんなんだな」

 そのままボケッと空を眺めていると、翔馬が座っているベンチの後ろの茂みがガサガサと音を立てだした。その音も全く気にせず、翔馬がボケッとしていると、にゃー。と、猫の鳴き声が聞こえ、一匹の猫がベンチの近くで翔馬の方を見ながら座っていた。

 猫と視線が合ったが、猫は逃げるどころか近付いてきて、翔馬の近くでもう一度座ると、もう一度、にゃー。と鳴いた。

 こんな寒い中こいつも大変だな。人間みたいに家の温かいところで夜を越せる訳じゃないし。

「どうしたんだ?」翔馬が猫にそう言うと猫はゆっくり動いて、付いて来いと言わんばかりに立ち上がり翔馬に背を向けて歩き出した。

 翔馬がボケッと猫を見ていると、猫が振り返り、翔馬の近くまで戻って来てもう一度座り、にゃー。と言った。

「なるほど、付いて来いって事か」翔馬は猫の言いたいことが分かり、立ち上がると、猫が公園の外へ向かって歩き出した。

 翔馬は公園で横たわっているヤンキーたちを背に、猫が歩いて行った方へ向かった。

 猫は常に翔馬の二メートル程前を歩き、チラチラと翔馬が付いてきていることを確認する為、ピタッと止まって後ろを振り返ったり、それで翔馬との距離が縮まった分早歩きで先頭に戻って歩いたりしていた。

 頭のいい猫だな。それにしても寒ぃ。手が悴んできた。

 暫く猫に付いて行くと、偶然横にコンビニがあり、猫はその前の通りを通り過ぎようとしていた。

「なぁ、猫ちゃん」翔馬がそう言うと、猫は立ち止まり首だけ後ろを振り返った。

「コンビニ寄っていい? 温かいコーヒー買いたいんだけど・・・・・・って言っても流石に猫には分からないか・・・・・・な」

「シャー‼」猫はダメだと言わんばかりの威嚇すると、また前を向いて歩きだした。

 なるほど、反応しているって事は、俺の言っている言葉がある程度分かっているって事か。でも、流石に手先を温めたい。

「ちょっと待って」翔馬がそう言うと、また猫がピタッと止まって首だけ後ろを向いた。

「お前にも何か買ってあげるよ。寒いし、温かいもの飲もうぜ」翔馬がそう言うと、猫は翔馬の方めがけて走ってきた。かと思いきや、少し通り過ぎていたコンビニの入り口の前に、コンビニを見つめるように座った。

 翔馬は、自分の買って貰えるなら良いのかよ! と、心の中で猫に対するツッコミを入れていると、翔馬が立ち止まっていたことを不審に思ったのか、猫が首を斜めに傾けながら翔馬の方を向いた。

「いらっしゃいませ!」大学生くらいの女性店員の挨拶が聞こえてくる。店員さんは猫を見ると、フフッ っと笑ったが、そのままレジに立っていた。最初はコンビニに行くことを拒んでいた猫も、尻尾を振りながら店内を見て回っていた。翔馬は缶コーヒーを買うことが決まっていたので、猫が何を選ぶのかを見ていた。

 猫は暫くの間ぐるぐると店内を回ると、一瞬缶詰のキャットフードのところで立ち止まった。体は前を向いたまま、顔だけ缶詰の方を向いてじっと見つめている。まだ翔馬のことを呼ばないと言う事は、買うか買わないかで葛藤しているのだろう。

 こりゃまだ時間がかかるだろうな。

 缶詰を見つめたまま固まって動かない猫を見て、翔馬は先に缶コーヒーを買って店内のイートインで飲みながら待っていることにした。

 レジにコーヒーを買っていくと、店員さんがニコニコしながら話しかけてきた。

「ほんとはダメですからね」きっと猫を店内に入れたことだろう。ペットだと思われているんだろうなぁ。

「ああ、えっと、すみません、ありがとうございます」

「まあ、私はバイトなので、店長には黙っておきますけど。あと、他のお客さんが来たら、問題になるかもしれないので、その時はすぐに、こっそり外に出て下さいね」

「分かりました」優しい店員さんで良かった。

 翔馬はお会計を済ませてコーヒーを受け取り、イートインに向かおうとした。

「ちょっと待って」翔馬は店員さんに引き留められた。そう言うと、店員さんはレジの後ろにある事務所に入って行った。

 んーっと、何だろう? 猫の物も何か買っていけとかかな? あいつまだ自分が買うの選んでるんだけどな。

 ふとそんなことを考えたが、店員さんはすぐに事務所から出てきて、ぺらぺらした物を渡してくれた。

「これ、(ばん)(そう)(こう)。いつも持ち歩いてるの。あんた右手だけ怪我してるから、喧嘩したんでしょ? 使っていいよ。血は固まってても張っとかないと寒さで痺れてくるでしょ?」

「あ、ありがとうございます」翔馬は絆創膏を四枚受け取ると、イートインでコーヒーを飲みながら右手の握りこぶし、血の固まっている部分に張った。そして携帯を取り出すと、時間を見た。

 20時30分か。本当はイートインも使っちゃいけない時間だな。イートインも片付けないでいてくれるし、あの店員さんには感謝しないとな。

 イートインでコーヒーを飲んでいると、店の窓ガラス越しに、店内の角から猫が翔馬のことを見ているのが目に入った。翔馬は猫の方に振り返ったが、猫はまた店内の散策に向かってしまった。

 俺がどこにいるのか確認しに来ただけか。

 携帯を弄りながら暫くすると、猫が翔馬のすねのところに頭を擦ってきた。

「決まったのか?」

「にゃー」猫は買うものが決まったらしく、翔馬のことを呼びに来たようだった。

 翔馬は立ち上がると、猫が歩きだしたので付いて行った。しかし、猫は何故か色々な物を見て回っていた。

 まだ決まってない? 一緒に見て回りたかったのかな。

少し疑問にも思ったのだが、猫は店内を一周すると、チキンが並んでいるところの前で座った。

「このサラダチキンか?」

「にゃー」

 翔馬はサラダチキンを持ってレジに向かい、レジ横の温かい微糖のコーヒーも序に出した。そして、お会計を済ますと店員さんにこう言った。

「このコーヒー今日のお礼です。飲んでください」店員さんは笑顔になった。

「ありがとね!」

 翔馬はイートインに置いておいたコーヒーを持つと、店を出た。外に出た直後に猫が足にしがみ付いてきたので、買ったサラダチキンの袋を開け、その袋をお皿代わりにサラダチキンを地面に置いた。

 猫はすぐに食べだしたので、翔馬はまだほんのり温かい缶コーヒーをちびちび飲みながら、猫が食べ終わるのを待った。

 この猫は俺をどこに連れて行くつもりなんだろうか。

 1章はここまでになります! また次回にご期待ください!

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