夕食を済ませ、彼方が風呂から出ると、アリサがテレビを見ていた。
「あ、彼方お風呂出たんだ。テレビ面白いのやってるよ」
「そうか」彼方はそう答えたが、こんだけ魔法ばっかの世界で完全に科学でできたテレビがあることが不思議だった。
電波とかは魔法で飛ばしているんだろうか。テレビ自体は錬金術とかで作れるのかな。よく見るとプラスチックじゃないな。
「彼方バカじゃないの? あたしはテレビの番組が面白いって言ったんだよ。テレビ自体が面白いって言ったんじゃないんだよ」
「ああ、ちょっと気になっただけだ。そうだよな。テレビは面白くないよな」そう言うと、彼方はアリサの横に座った。
テレビでは一年に一度のお祭りである『大魔導祭』がやっていた。大魔導祭は魔法で戦って、その年に一番強い人を決める、いわばオリンピックのようなものだった。四人一チームの団体戦では、リゼルというチームが優勝し、個人ではリゼルの団長が優勝した。個人決勝ではお互いにリゼルのチーム内の者同士が戦っていたらしく、最後は握手で試合が幕を閉じた。
「このリゼルって四人組の団体凄く強いな」
「そうだね。三年連続団体優勝しているし、個人でも団長さんが三年連続優勝しているんだよ」
「へぇ~、凄いな」
「はぁ~あ。ん~」アリサが大きなあくびをして、目を擦りだした。
アリサは眠くなってきたか。僕が起きてるから寝ないようにしているんだろうな。
「アリサ、僕眠くなってきちゃったよ」
「ほんと! 丁度あたしも眠くなってきたところだったの。今日はもう寝よう」
「そうだな、そうしよう」
「あ・・・・・・。どうしよう、ベッド一個しかない」
「僕ソファーで寝るからいいよ。アリサはベッドで寝な」
「分かった。そうする。おやふみ~はぁ~」アリサはもう一度大きなあくびをすると、寝室に入って行った。
その夜、誰かの泣いている声がして目が覚めた。彼方はアリサの部屋をそーっと覗いてみると、寝ているアリサがうなされていた。
「・・・・・・嫌・・・・・・止めて。・・・・・・怖いよ、い、行かないで」
彼方はアリサの横に行き、暫くアリサの頭を撫でているとアリサが安心したような表情に変わり、すやすやと寝息を立て始めた。彼方は大丈夫そうになったことを確認して、またソファーに戻った。
アリサのやつ、十四歳で一人で暮らして、お金稼ぐために起業までしてるんだし、そりゃあ大変だよな。僕も基本的にはずっと一人だったけど、アリサの大変さは僕にも分るよ。僕もいつまでも弱いままじゃなくて、ちゃんと役に立てるようにならないとな。
彼方はそう思いながら、暫くの間起きてアリサがうなされないか気を配っていたが、アリサはうなされることなく寝られていたようだったので、彼方ももう一度眠りについた。
朝になり、彼方は朝食の準備をしていた。簡単に焼いたパンと目玉焼きを作り、朝食の準備が出来たところでアリサが起きてきた。
「おはにょ~。むにゃむにゃ」アリサは寝ぼけ眼をこすっていた。
「おはようアリサ」
「・・・・・・昨日はありがと」アリサは小声で俯きながらボソッと呟くように言った。
「ん? どうかしたか?」彼方はよく聞き取れなかった。
「いい。何でもない。バカ! クズ!」
アリサは朝からご機嫌斜めのようだな。
「朝から何怒ってんだ?」
「何でもないって言ってるじゃん!」
「はいはい。朝食できてるぞ、先ずは顔洗ってこい」
「・・・・・・うん」
二人は朝食を済ませると、今日行く予定の魔物が沢山いるところについて話していた。
「カザス森林が良いんじゃない? 十キロくらいしか離れてないよ」
「十キロも歩くのか? 行きは良いけど帰りがキツいだろ。この地図だと、カザス高原は十五キロ離れているけど、その近くに村があるから、一泊して帰ってくれば往復二十キロを一日で移動するより楽だぞ?」
「ダメ、明日学校あるから」
「何ですとぉ⁉」
「何ですとって何?」
「アリサ学校通っていたのか⁉」
「当たり前じゃん。まだ十四歳なんだもん」
「会社経営の仕事しながらだよな?」
「そうだよ。だからあんまり行ってない。まあ、学校にも申請してるし、飛び級して高校生だから問題ないよ」
「飛び級。やっぱりアリサは優秀なんだな」
「そうだね。飛び級したのにあたしより強い高校生いなかったからね」
「なるほどな、ともかく明日学校あるならカザス森林にするか。日帰りならそこが一番近いし」
「うん!」
[カザス森林]
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noteもやってます!!
3章まで書いていますので、ぜひ読んで下さると嬉しいです(*^^)v
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