登場人物
神崎 海斗 物語の主人公16歳
篠原 琴乃 16歳 幼馴染
アリカ ティアス ピンク髪の神様
爺ちゃん サブキャラ
森のぬし 黒いドラゴン 詳細不明
~森の主との対決~
九時になりアリカの家に着くと、もう既に琴乃と爺が来ていた。
「遅いわよ海斗」
「時間ピッタリだろ! 琴乃が早く来すぎなんだよ」
「ごちゃごちゃうるさいわね。今日はあんたの奢りね」
「ざけんな!」
「爺にも奢ってくれるのかの?」
「誰にも奢らねぇよ! ってか何で爺もいるんだよ。パーティに入れてないだろ」
「森のぬしは爺のいう事だけは聞いてくれるんじゃ。だから爺がいた方が良いのじゃ。信頼関係じゃ。信頼関係、ふぉっふぉっふぉ」
「あ、そうですか」僕は適当に返事をして、その場で琴乃と爺と無駄話をしていると、家からアリカが出てきた。
「・・・・・・行くよ」
俺達はアリカに連れられ森に向かった。
「なあ、アリカ。俺ほんとに素手で戦うのか?」
俺には不安が残っていた。
「・・・・・・大丈夫だと思う。ほら、もうすぐ着くよ」
森の近くまで行くと、森の主である黒いドラゴンが気持ち良さそうに寝ていた。
「こいつほんとに無害だと思うぞ?」
「・・・・・・。」
「倒す必要あるのか?」
「・・・・・・ある」
前を見ると、爺が走って行ってしまっていた。
「ふへへへへ。爺の恐ろしさ見せてやるぞい」
爺は持っていた剣を振り回しながら、狂ったように森のぬしの方に走り出していた。
「ふへへへへ、ふへへへへ」
爺は剣を振り回し、まるで野生を取り戻したかのように、狂ったようにへらへらしながら走っていた。
「ふへへへへ、ふへへへへ」
爺の目は血走っていて、まるで酒を飲んでハイになったかのような状態だった。
「ふへへへへ、ぶち殺してやるのじゃ!」
爺の奴何やってんだよ、信頼関係があったんじゃないのかよ! 何でぶち殺そうとしてるんだよ!
森のぬしは爺の方をちらっと見ると、尻尾で爺を吹き飛ばした。爺はそのままどこかへ飛ばされて消えてしまった。そして、森のぬしはゆっくりとこちらに近づいてきた。
「爺のやつ話しがちげぇだろ。あいつのいう事は聞くんじゃなかったのかよ。信頼関係はどこ行ったんだ!」
「また会ったわね。海斗くん」
「お前喋れるのか⁉」森のぬしが喋ったことに、俺は驚いた。
「喋れるわよ。」
「また会ったわねって、俺はここ通り過ぎたことしかないと思うんだけど、何で俺のこと知ってんだ?」
「知ってるわよそりゃ。あんたがめちゃくちゃクズだってこともね」
「え・・・・・・。」森の主は黒いドラゴンだから表情はあまり読み取れなかったが、俺は、どことなく森の主が怒っているような気がした。
「あたしと戦うんでしょ?」
「いや、実際お前無害だから戦う必要ないと思うんだが・・・・・・。」
「あら、また戦わないの? 臆病だなお前」
「またって、お前と戦おうとしたことないだろ」
「あそう、それでも戦え」
「そんなこと言われても・・・・・・ってかお前に勝てる訳ないだろ」俺はチラッと琴乃とアリカの方を見ると、木の陰に隠れてこちらを見ていた。作戦の『命大事に』はあいつらだけしっかり守っていた。
「あいつらぁ」俺は木の陰から見守っている二人に少しだけイラ立ったが、直ぐに落ち着き、森のぬしにこう言った。
「絶対に勝てないと思うし、戦わなくていいか?」
「無理、ダメ!」
「そんなこと言われてもな。暇つぶしに殺されちゃたまったもんじゃない」
「あんたそれでも勇者なの? あんたに戦う気がなくてもあたしにはあるから」そう言い、森のぬしは右腕を俺の方に振り上げ攻撃を仕掛けてきた。俺は咄嗟にそれを後ろに跳んでかわした。
「あっぶねぇー」
前を見ると、右から尻尾が迫ってきているのが分かったので、俺はそれをしゃがんで避けた。
「何すんだよ!」
「あんたもやり返してきなさいよ」
「し、仕方ねぇ」俺は爺が落としていった剣を拾い構えた。
それを見た森のぬしは口を開けて火の球を打ってきた。
俺は左に走って避け、前に進み森のぬしとの距離を詰めた。ジャンプして切りかかったが、左手で守られ カコン っという音と共に剣が弾き返されてダメージを与えることはできなかった。
「硬ぇな。さすがはドラゴンだ」
「あたしたちドラゴンは生き物の中で一番固いうろこで覆われていると言われているのよ。そんな鈍らみたいな剣であたしに傷つけることなんてできる訳ないでしょ」
「知ってるよ! どうやって勝つんだよ、無理だろ!」
「しょうがないなぁ。じゃあ、これならどう?」森のぬしはそう言うと、白く光りだした。そして、徐々に小さくなり人型になった。
「あ、お前!」森のぬしは、今朝会った青い髪の女の子になっていた。
「さっここからが本番よ。お手並み拝見と行こうじゃない」彼女はそう言い俺との距離を目にも止まらぬ速さで詰めてきた。
俺は咄嗟に剣を捨てて腕を曲げ、格闘技の構えをした。
彼女は近くまで接近すると、俺に後ろ踵回し蹴り(うしろかかとまわしげり)を僕の右肩に向かって放った。
俺は右腕でそれを防ごうとしたが、防ぐことはできず、右腕では弾かれ、右肩まで後ろ踵回し蹴りが当たってしまった。その直後、肩にすさまじい痛みが走りそれと同時に左方向へ吹き飛ばされた。
(((痛ってぇ)))
俺は右肩を抑えてふらふらになりながら何とか立ち上がった。
これ、右肩折れてるな。右腕も重症なくらいの痣がある。
「あんたへの恨みはまだまだこんなもんじゃないから」彼女はそう言うと、ゆっくり近づいてきた。
俺は頭を攻撃されたわけではないのに、頭がふらふらして右肩を抑えたまま動けなかった。
彼女は俺の前に立ってこう言った。
「海斗のバカ!」彼女はそう言うと、俺の顔をひっぱたいた。
「何年待ったと思ってるのよ!」
「え・・・・・・。」
「バカ!」彼女はもう一度俺の顔をひっぱたいた。彼女は明らかに涙目になっていた。
「あんた勇者なんでしょ。なんでもっと早く来てくれなかったのよ!」
「いや・・・・・・その・・・・・・ごめん」俺は彼女が泣きそうになっているのを見て、その言葉しか出てこなかった。
彼女がもう一度ひっぱたこうとした時、いつの間にか木陰から出てきていたアリカが横に来ていてこう言った。
「・・・・・・海斗も昨日勇者だったってことを知ったばっか」彼女は俺をひっぱたこうとするのを止めた。
「・・・・・・あと、この村はみんなが適性を測るとは限らないらしい」
「え・・・・・・何で? 普通幼少期の頃に測るでしょ?」彼女は驚いていた。
「・・・・・・分からない。私も情報不足だった。・・・・・・ごめん」アリカが謝ると、彼女は涙を拭いて俺にこう言った。
「あたしをあんたのパーティに入れて」
「え、あ、ああ。・・・・・・ああ?」
「・・・・・・入れてあげて」アリカもそう言った。
「わ、分かった。入れるのはいいけど、俺冒険者じゃないんだけど。」俺がそう言うと、アリカがこう言った。
「・・・・・・冒険者になって」アリカはそう言ったが、僕は混乱していてどうすればいいのか分からなかった。
「あ、冒険者に・・・・・・なった方が良いのか?」
「そう、冒険者になるの」彼女がそう言った。
「え、あ、ああ。わかった」
「あたしのところに来なかったこと、まだ許してあげる訳じゃないけど、今日はとりあえず帰るわよ」
「じゃあ、・・・・・・森のぬしの討伐はこれで終わり」アリカがそう言った。
女の子は、いつまでも俺が肩を抑えているのを見てこう言った。
「ちょっと見せて」俺は痛いのを我慢し、抑えていた左手をどけた。
「右肩は折れてるわね。あと腕も痣が凄い。ヒールかけるからちょっと待ってね」
「え、ああ」俺が返事をすると、女の子は俺に回復魔法のヒールをかけた。
「「「ヒール」」」
すると、あっという間に痛みが取れた。
「もう大丈夫よ」
「お、おう、本当だ。痛みが嘘のように無くなってる」俺は腕をぶんぶん振り回したが、完全に痛みはなくなっていた。
「あんた何であたしが近づいた時に剣捨てたの?」
「それは、まあ、女の子だったからだけど」彼女は少し驚いた表情を見せた。
「あんたバカじゃないの? あたしがほんとにあんたを殺そうとしていたらあんた死んでるわよ!」
「ははっ確かに死んでるな」
「ははっじゃない! ほんとバカね。もういい、早く帰るわよ」
*
帰り道。俺たちは木陰から出てきた琴乃と一緒に森のぬしにいろいろと質問していた。
「なあ、ドラゴン。お前の名前は?」
「何その言い方。まあいいわ。私はヒナよ」
「ヒナか。よろしく」
「あたしは琴乃よ。あたしも俺のパーティの一員なんだ」
「そうなんだ! よろしくね琴乃」
「ヒナは何歳なんだ?」
「人間の歳で言うと17歳ね」
「何年も前から居たんじゃないのか?」
「竜だから歳を取るのは遅いのよ」
「そうなんだ。竜ってことはアリカと同じで天界から来たのか?」
「そうよ、天界から来て16年も勇者が見つからないなんて思ってもみなかったわよ」
「ご、ごめん」俺が謝ると、アリカが俺に向かってこう言った。
「・・・・・・勇者はドラゴンに会わないといけないの知ってた?」
「それはまあ、知ってたけど、俺は自分が勇者だってことを知らなかったんだよ」
「・・・・・・そう、やっぱりそうだったんだ」
「ところでさ、ヒナに会うと何かあるのか?」
「・・・・・・自分で確かめて。」
「・・・・・・⁇」俺はどういうことか分からなかった。
「もういいわよ。知らなかったんでしょ。家で話すわよ」
「お前の家、森の中だろ」
「今日はあんたんち泊まるわ」
「俺んち⁉ 嫌だよ!」
「アリカちゃんち泊めれば?」琴乃がそう言った。
「私は海斗んち泊まるから大丈夫よ」
「何で俺んちなんだよ」
「海斗んちはちょっと・・・・・・。」
「ほら、琴乃もそう言ってることだし・・・・・・。爺んちは?」
「爺ってさっき私が消し飛ばした人?」
「あーそれそれ」
「何であんな奴なんかの家に泊まらないといけないのよ。あんたんち泊めなさいよ」
「いや、だって俺んち汚いし・・・・・・。」
「・・・・・・海斗んち」
「マジかよアリカ・・・・・・。」
「・・・・・・そこまでが主人公の役目」
「嫌だよ。ざけんな」
「・・・・・・ペナルティ」
「え・・・・・・。」
「ペ・ナ・ル・ティ・イ」アリカはまれに見る強気な態度だった。
「分かった分かった。泊めるよ。泊めりゃいいんだろ」
「決まったわね。これからお世話になります」
「はいはい、ん? これから? 今日だけだからな?」
「何言ってんの? この先ずっとに決まってんじゃん」
「・・・・・・え。」
「え。じゃないわよ。・・・・・・は~あ、もっと早く来て欲しかったな」
「わ、分かったよ。泊めるよ! 泊めりゃあいいんだろ?」
俺はため息をついた。一人暮らしを満喫していたので、それが無くなると思うと何だかやるせない気持ちになった。
そんな話をしている間に俺の家に着いた。
「それじゃ、またな、アリカ、琴乃」
「うん、じゃあね」
「・・・・・・また呼ぶ」家の扉を開けると、吹き飛ばされたはずだの爺がいた。
「ふぉっふぉっふぉ、待っていたのじゃ」俺は暴れている爺を外に捨ててくると、ヒナと今後についての話をした。
「ヒナは何で俺のことを待ってたんだ?」
「だって勇者適性があるんだもん。勇者適性がある人は代々魔王討伐を余儀なくされてるのよ。今すぐにでも冒険に出るべきよ」
「え、めんどくさっ」
「なに面倒くさがってるのよ! 私は勇者の補佐をするために天界から召喚されたのよ。あんた勇者なんだから魔王討伐に行くわよ」
「やだよ、死んだらどうすんだよ」
「その時はその時でしょ! 何で断るのよ! 勇者としての自覚を持ちなさいよ」
「はい、この瞬間。勇者辞めました。もう勇者じゃありません」
「魔王を討伐しないと、世界が平和にならないのよ!」
「俺はポーションを売る仕事をしてるから、ある程度不安定な状況の方が生活が豊かになるんだ」
「なに、絶対に魔王討伐に行かないつもり?」
「絶対に行かない」
「あらそう、それは一大事ね。勇者が勇者辞めるなんて前代未聞だわ。こういう時は天界の判断にゆだねるしかないわね。天界に拉致るわ」
「「「ゲート」」」
ヒナがそう唱え、右手を前に出すと、俺の家の中に如何にも異次元に飛ばされそうな何かが出てきた。
「何だこれ」
「あんたには、勇者として生きていくことを強く言い聞かせないといけないわ。天界でみっちりとお仕置きが必要ね。行くわよ」
「天界には帰れないんじゃないのかよ!」
「あんたが勇者を辞めようとしているって言う重大事件が発生しているから、今回は特例が下りるはずよ。ってか、特例が下りたからゲートが開いてるんだけどさ」
「そ、そんなこと言ったって、」
俺が反論した時、突然ゲートが俺たちを吸い込みだした。
「待て、行くなんて言ってねぇだろ。吸い込まれる、どうなってんだよ! うわあぁぁぁ~」俺たちはゲートに吸い込まれた。
今回はここまでになります!
また次回にご期待くださいm(_ _)m
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